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ニーマイヤーハウス生活1周年(2)

12月に入って、ますます日が暮れるのが早くなる。午後4時半、もう窓の外は真っ暗で、暗い森の上に煌々と満月が昇ってくるのが見える。

 

この週末には、ヴァイナハト・パーティーという、ニーマイヤー・ハウス住民の恒例のクリスマスパーティーが、共有のギャラリースペースで開かれた。それぞれが、自分の家で作ったお菓子を持ち寄って、飲み物は、コーヒー、紅茶で始まって、ビール、シャンペンも用意されて、いつもは、廊下やエレベーターで、急ぎ足ですれ違って挨拶をするだけの住民も、この日、ここに集まっておしゃべりをする。子供たちもやってきて、プレゼントをもらう。去年、ちょうど引っ越してきた日が、このパーティーの日だった。だから、このヴァイナハト・パーティーが、私のニーマイヤーハウス1周年記念パーティーだ。

 

昨年は、ちょうどテーブルの準備をはじめたところに通りかかったので、「引っ越してきたばかりです・・・」と挨拶をすると、パーティーを取り仕切っているらしい大柄なおばさんは、「1時間後にはパーティーをするのよ、いらっしゃい、いらっしゃい」と快く入れてくれて、集まった住民に紹介までしてくれた。おかげで、引っ越してきたその日に、ほとんどの住民と知り合うことができた。集合住宅だと、隣、上下に、誰が住んでいるのかわからないまま、何年も過ぎてしまうようなこともあるから、ちょうどそういう日に、引越しをしてきたのは、幸運この上ないことだった。

 

そうして、さっそく顔を覚えてもらったら、そのパーティーの時には、話をしなかった人も、あとで、エレベーターで会うと、「自分は、何階の何号室だ」とか、「私は、ここで一番古い住民です」とか、「困ったことがあったら、いつでもノックして」とか、声をかけてくれた。ベルリンの人は利己的だとか、北のドイツ人は冷たいとか、イタリアで、そういううわさばかり聞いていたし、外国人が嫌いな人もいるだろうから、そういうことも覚悟してきたのに、この建物の中で会う人会う人があまりにも親切で、こんな素敵なことってあるかしら、と、なんだか夢のようだった。その話を、ベルリンに住んでいる人にすると、それは珍しいよ、と、みな口をそろえて言うから、私は格別に恵まれた場所に引っ越してきたのかもしれない。

 

同じ階の2件向こうに住んでいて、アレクサンダープラッツのそばでジーンズ屋をやっている、という夫婦は、「うちの息子があなたのことを、とても気に入っていてね、だから、いちど、うちに食事に来てくださいよ」 と、引っ越して1週間もたたないうちに、家に呼んでくれた。うちの息子と言うのは、3歳である。 (40歳年下。)

 

去年のパーティーでは、お菓子を準備をする時間もなかったから、イタリアから運んできた、ペペロンチーニ入りのチョコレートをかごに入れて持っていったけれど、今年は、ちゃんと自分で作った。去年並んでいたのが、クッキーやタルト、スポンジケーキだったのを覚えていたので、ちょっと趣向の違うものがいいかな、と思い、イタリア仕込みのティラミスと、数年前フランスから実習に来ていた子に教えてもらったレシピで、チョコレート・トリュフをつくった。少なくとも50人、多ければ100人以上が参加するので、ティラミスなら、スプーン一口でも満足できる濃厚さだし、チョコレート・トリュフなら、ネタを準備してしまえば、後は、ひたすらココアパウダーをまぶしながら小さな団子にすればいいだけだから、100個、200個つくるのもわけない。

 

なにしろ私は、「我つくる、ゆえに、我あり」という人間なので、チョコレートでも、ケーキでも、つくるのは、大好きだ。それも、いっぱいつくると、ストレスが解消するというか、もうなんか、世のうざうざをすべてを忘れて、すっきりする。だから、こういう大人数のためにいっぱいつくれるチャンスには、わくわくする。思えば、ずっと忙しくて、何年もお菓子を作ったりする暇も余裕もなかったので、ひさしぶりに腕を振るった。

 

おいしいものは、確実に人を幸せにする。ティラミスは、ドイツでは、特別なイタリアレストランにでも行かないと食べられない珍しいお菓子だから、かなり多めに作ったけれど、ぜんぶきれいになくなった。トリュフは、いわば高級一粒チョコレートだから、嫌われるわけがない。これも、ぜんぶなくなった。大満足である。

 

それにしても、この共有スペースのギャラリーがなければ、こういうパーティーも実現のしようがないわけで、こういう住民のつながりができるのも、よい建築のなせる業なのかもしれない。

 

この建物を設計した、ブラジル人建築家、オスカー・ニーマイヤーは、このハンザ・フィエテルの計画にかかわった22人の建築家のなかで、ただ一人存命する建築家である。グロピウスも、アアルトも、ヤコブセンも、タウトも、とうの昔に鬼籍に入ってしまっているけれど、ニーマイヤーは、今も現役で、現在、ベルリンに隣接する、ポツダムという町に、新しいプロジェクトを計画中だという。

 

この5月に、ブラジルのジャーナリストが訪ねてきたことがあって、そのときに、もうこの建物がどのくらい素晴らしくできているか、ということを、感激して話していたら、「今度ニーマイヤーに会ったら、伝えておくわ」と言われて、え、ご存命?と、腰が抜けるほど驚いた。それでいったいおいくつなのかしら、と調べてみたら、1907年12月15日生まれ。まもなく99歳。来年で100歳。それで、ばりばりの現役である。すごすぎる・・・。

 

このニーマイヤー・ハウスが建設された1957年からの住民の一人で、元気矍鑠81歳になるおばあさんは、最近の噂話として、「ニーマイヤーさん、最近ご結婚なさったらしいわよ(何度目かは知らないけれど・・・)」というのを、教えてくれた。すごすぎる・・・。

 

ここで暮らしていたら、そういう生命力にあやかれるかしら。40歳年下で、最近4歳になった近所の子も、将来のパートナー候補に入れておこう。「彼とは、かれこれ50年前、彼がまだオムツをしていた頃に、ここのヴァイナハト・パーティーで知り合いましてね・・・」なんて、50年後、ニーマイヤー・ハウス100周年記念パーティーの席で言っている94歳の私も、悪くない、悪くない :)。

 

 

阿部 雅世 公式サイト www.macreation.org


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Kyoko  Asakura

こんにちわ。私もオスカー・ニーマイヤー大好きです。こないだ、スペインの全国紙El Paisの日曜版にニーマイヤーさんのインタビュー(近影とスタジオの写真満載)が掲載されていて、コレマタかっこよかったです。円形の窓から見える海岸の眺めは絶景だし、ちらっと見ただけでブラジルに行きたくなります。今でも彼はしっかりフルタイム働いて夕食時間からは尋ねて来た友人、知人と楽しく過ごすのが日課だとか。見習いたいですね。でも、いつか阿部さんのご自宅もかっこよさそうです。見学希望者急増中では?
by Kyoko Asakura (2006-12-15 17:50) 

Kater

ティラミスのレシピ早速試してみようと思います!濃厚でおいしそう。
で、ここに載っているトリュフのレシピも載せていただけませんか?
by Kater (2007-09-25 18:25) 

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